AI に秘書・リサーチ・マーケティングの役を振り、「AI 社員を 10 人並べれば 1 人で会社が回る」。SNS ではそんな話をよく見かけますが、代表の戸田は、これは幻想だと考えています。
AI が賢いなら、作業を任せるより、戦略を考える側に置くほうがいい。目標を立て、計画し、実行し、振り返る。この面倒なサイクルを AI に支えてもらうのが、代表の考える AI の正しい使い方です。
この記事は YouTube 動画『AI社員10人で会社が回るは嘘です!本当の賢い使い方教えます』の内容をまとめたものです。ツールの操作手順は動画公開時点(2026 年 8 月)のもので、画面や手順は変わることがあります。
「AI 社員」で会社が回らない理由
作ってくるものは、たしかにすごい。それでも、そのまま世の中に出せるか、仕事でそのまま使えるかと聞かれると、まだそこまでではありません。
代表の感覚では 60〜70 点。結局、人が確認して直す必要があります。
ここで問題が起きます。速すぎるのです。50 体の AI を並べれば、確認すべき成果物も 50 体分。
確認が追いつかず、自分がボトルネックになって仕事が止まります。
本来の社員は、組織として動き、自分たちで品質を担保してくれる存在です。「AI 社員」の実態は、そこそこの成果物を無限に投げてくる新人が 50 人横並びになっているようなもので、組織と呼べるものではありません。
本当の問題:作業担当ばかりで、戦略を考える人がいない
代表がもっと問題だと考えているのは、よく見る「AI 社員の組織図」の中身です。上に人間がいて、その下に秘書・リサーチ・マーケティングが並ぶ。並んでいるのは、全部作業の担当者です。
仕事でいちばん大事なのは戦略です。上の意思決定が間違っていれば、いくら作業を速くしても、間違った方向に速く進むだけです。
社長しか売れない会社の例
代表が実際に聞いた話です。制作やアプリの受託開発をしている会社で、社長が営業に行くと案件が取れるのに、ほかの社員だと取れない、という状態が続いていました。社長は、自分が取ってきた案件をさばける人を増やそうと、採用を考えました。
詳しく聞いてみると、社長だけが売れる理由がありました。社長は自分の裁量で、その場で「これもやります」とカスタマイズを約束できた。社員にはその権限がなかったのです。
本当の問題は人手不足ではなく、社長しか売れないことでした。正しい打ち手は、採用より、誰でも売れる提案のパッケージを作ることだった、と代表は考えています。
もしここで「採用を AI で効率化しよう」と動いていたらどうなるか。採用の費用は下がり、人も多く採れるかもしれません。
でも人件費と固定費が上がるだけで、売上はたぶん上がりません。間違った戦略を AI で効率化すると、状況はむしろ悪くなります。
AI が賢いのなら、作業をさせるより、戦略や作戦を一緒に考える立場に置く。東大生や天才を雇って、作業だけさせるのはもったいない、と代表は話しています。
目標・計画・実行・振り返りのサイクルを AI に支えてもらう
仕事には、次のサイクルがあります。いわゆる PDCA です。
- 目標を立てる
- 計画する
- 実行する
- 振り返って目標や計画に反映する
理屈はわかっていても、きちんと回している人は多くありません。面倒だからです。
この面倒なサイクルを AI に支えてもらう。なかでも最も大事な目標設定と計画の設計を、AI と相談しながら精度高く行う。
目標から振り返りまでのサイクルを AI が支える人件費が浮く、資料づくりが速くなる、といった効果も大事ですが、代表はこちらのほうがずっと大事だと考えています。社長に限らず、部長でも、目標を持って働くどの立場の人にも当てはまる話です。
手順 1:gstack の office-hours で、戦略を相談する
戦略の相談相手として代表が勧めるのが、gstack(ジースタック)です。Y コンビネーター(スタートアップに投資し、一緒に育てる米国の組織)の CEO、ギャリー・タン氏が公開している、Claude や ChatGPT の機能を拡張する「スキル」の詰め合わせです(出典:GitHub「garrytan/gstack」)。
その中の office-hours(オフィスアワー)は、Y コンビネーターの面談をもとにしたスキルで、アイデアや計画を厳しい質問で問い直してくれます。
ふつうの AI に経営の相談をすると、イエスマンのような当たり障りのない答えが返ってきがちです。office-hours は違います。耳の痛いことまで突っ込んで聞いてくるところが、代表は気に入っています。
準備
- ChatGPT か Claude の有料プラン(動画では月 20 ドルのプランで十分と説明)を契約する
- パソコン用のアプリ(Mac 版または Windows 版)をダウンロードしてインストールする
- ChatGPT なら Codex、Claude なら Claude Code の画面を開き、作業用のフォルダを選ぶ
- 操作のたびに許可を求められないよう、自動で承認するモードにする
- gstack の URL を貼り、「これをスキルとしてインストールしてください」と頼む
インストールが終わったら、Claude では「/office-hours」、ChatGPT(Codex)では「$office-hours」と入力すると使えます(動画公開時点の操作)。
実際の相談の流れ
動画では、先ほどの例に近い会社を想定して、次のような大ざっぱな相談をしています。
/office-hours
受託開発の会社をやっています。社員は 12 名、売上は年 1 億 2,000 万円くらい。
ここ 2 年、売上が横ばいで止まっています。何から手をつけたらいいかわかりません。
雑な相談でも大丈夫です。まず、質問が返ってきます。
売上が横ばいの直接の原因は何か。営業を頑張るのか、単価を上げるのか、稼働を埋めるのかで、打ち手はまったく変わる。だから感覚ではなく、直近 1 年に実際に起きたことで答えてほしい、と。
動画では次のように答えました。
- 稼働率は 75% くらい
- 営業は 2 人で、月 40 件回っても 1 件も取れないことがある
- 社長が月 8 件回ると 3〜4 件決まる
すると AI は、その差がスキルの差なのか、回っている相手の質の差なのかを聞き、さらに「営業の商談に同席して違いを見たことがあるか」と踏み込んできます。
「同席したが、営業は技術的な質問に即答できていなかった」と答えると、AI は原因を「商談で技術的な質問に即答できる人が社長しかいないこと」と仮説を立てました。
正確に答えるほど、返ってくる答えも的確になります。仮説が違うと思えば、反論してかまいません。
打ち手の案を選ぶ
原因に合意すると、AI は打ち手の案を出してきます。動画では、次のような案でした。
- 案 A:商談を分業する。営業はアポ取りと最初のヒアリングに絞り、見込みのある商談には必ず技術者を同席させ、社長は最後のクロージングに集中する
- 案 B:社長の商談の型を作り、技術者を営業もできる人材に育てて、営業と組ませる
おすすめとして示されたのは、まず案 A を実行し、90 日ほどで案 B に移る順番でした。最後に、計画を設計書としてファイルにまとめてくれます。
納得いくまで何度やり直してもかまいません。戦略の方向が間違っていたら、ほかの努力が全部無駄になるからです。
代表自身も、新しい事業を始めるときは必ず gstack に相談しています。技術者である代表は、技術にこだわりたくなる。デザインが得意な人ならデザインにこだわる。
そうした自分のこだわりを、客観的に指摘してもらえるからです。
手順 2:kpi-ops で計画を行動の目標に落とし、毎週振り返る
計画ができても、来週から誰が何をやるかが決まっていなければ、会社は動きません。
ここで代表が使っているのが、代表自身が作って公開しているスキル「kpi-ops」です(動画の概要欄にリンクがあります)。インストールの仕方は gstack と同じです。
「/kpi-ops」で、計画書をもとに KPI(目標の達成度を測る指標)を作るよう頼みます。KPI は「行動」の形にします。
「月 8 件受注する」は、何をすればいいかわかりません。「1 日 100 件電話する」なら、できたかどうかがはっきりします。
動画の例では、次のような KPI が出てきました。翌日から何をすればいいかが決まります。
- 見込みのある商談への技術者の同席率を 100% にする(80% 未満なら黄信号)
- 持ち帰った技術的な質問には 48 時間以内に回答する
- 商談の記録を残す
振り返りこそ AI に任せる
計画を立てた直後はやる気があります。1 週間たつと「なんでこれやってるんだっけ」とやめてしまう。よくある話です。
kpi-ops では、この振り返りを大事にしています。
週次のレビューを始めると、AI が今週の状況を聞いてきます。
- KPI どおりに行動できたか
- 行動はできたのに受注率が上がっていないなら、KPI の設定が間違っていたと考える
- 行動が半分しかできていないのに、その場の気分で目標を変えることは避ける
こうした判断は、人間がいちばん苦手とするところです。だから仕組みとして AI に管理させる、と代表は考えています。
商談の記録を残しておけば、次に office-hours で相談するとき、社長と営業の商談記録を見比べて分析させることもできます。
さらに、Claude の定期実行(スケジュール)の機能で「毎週金曜日の 18 時に週次レビューをするよう知らせて」と登録しておけば、振り返りを忘れません。
まとめ:AI を作業員ではなく、相談相手の席に
作業役の AI を並べるだけでは、確認がボトルネックになり、仕事は回りません。そもそも、その作業が正しい戦略のもとで行われているかも怪しい。
まず、誰に何を売り、何で勝つのかを AI と一緒に決める。そのうえで、週次の振り返りを AI に支えてもらいながら、効率化できる作業を AI に任せていく。この順番が大事です。
経理の自動化や問い合わせ対応のような業務の効率化は、取り入れやすく効果も見えやすいものです。ただ、それだけでは AI の賢さを生かしきれていない、というのが代表の考えです。