ChatGPT・Claude・Gemini の法人プランは、3 社とも、入力した内容を既定では AI の学習に使いません。ですから比べるべきは「学習に使うか」より先の 3 点です。
例外になるのはどんなときか。会話はいつまで残るか。会社の中で誰が見られるか。
サービスの選び方の全体は、別の記事「ChatGPT・Claude・Gemini を、業務で選ぶときの判断基準 」で書きました。この記事では、そのうちデータの扱いだけを掘り下げます。
内容は 2026 年 10 月 3 日に各社の公式ページで確かめました。規約や機能は変わるので、契約の前に必ず見直してください。
学習:3 社とも既定では使わない。例外は「自分から渡したとき」 まず学習です。3 社の公式ページの書き方を並べると、次のようになります。
サービス
法人プランの入力内容
例外として書かれていること
ChatGPT(Business・Enterprise など)
既定では学習に使わない
会社が明示的にデータの共有を選んだ場合(フィードバックの仕組みなど)は、学習に使うことがある
Claude(Team・Enterprise など)
既定では学習に使わない
評価ボタン(高評価・低評価)やバグ報告でフィードバックを送った場合などは、その会話を学習に使うことがある
Gemini(Google Workspace)
許可や指示なく学習に使わない。人によるレビューもされない
サービス内でフィードバックを送った場合、そのデータは最長 18 か月保持されることがある
(出典:OpenAI「Enterprise privacy at OpenAI」 、Anthropic「Is my data used for model training?」 、Google「Google Workspace の生成 AI に関するプライバシー ハブ」 )
見落としやすいのが、回答の評価ボタンです。Claude の場合、評価ボタンでフィードバックを送ると、その会話全体が最長 5 年保存され、学習に使われることがあります。
評価ボタンを押した会話だけ、扱いが変わる 社員が何気なく押した評価ボタンで、その会話だけは扱いが変わります。
Claude の Team と Enterprise では、組織の管理者がこの評価ボタンを社員に使わせない設定にできます(出典:Anthropic「Is my data used for model training?」 )。社内ルールで「評価ボタンは押さない」と決めるか、設定で止めるかを、契約のときに決めておきます。
法人プランなら学習には使われない。ただし、フィードバックを送った会話は例外 になりうる。社員に伝えるのはこの一点です。 保存期間:消した会話は 30 日以内に消える。期間を会社で決められるのは上位プラン 次は、入力した会話がいつまで残るかです。学習に使われなくても、会話はサービス側に保存されます。残っている間は、社員が後から読み返せる一方、情報がサービス側に置かれ続けることにもなります。
サービス
標準の扱い
会社で保存期間を決められるプラン
ChatGPT
削除した会話や保存しない会話は、法律で必要な場合などを除き、30 日以内にシステムから消える
Enterprise、Edu、Healthcare(管理者が保存期間を決める)
Claude
会話は製品の中に保存される。削除するとすぐ履歴から消え、30 日以内にサーバーからも消える
Enterprise(最短 30 日で、組織の管理者が設定する)
Gemini(Gemini アプリ)
管理者が会話履歴を保存するか、何か月で自動削除するか(3・18・36 か月、既定は 18 か月)を決める。履歴をオフにしても、新しいチャットは最長 72 時間保存される
Workspace の管理者が設定する
(出典:OpenAI「Enterprise privacy at OpenAI」 、Anthropic「How long do you store my organization's data?」 、Anthropic「Configure custom data retention controls for Enterprise plans」 、Google「Google Workspace の生成 AI に関するプライバシー ハブ」 )
どの会社にも例外があります。Claude は、自動の仕組みで利用規約違反と判定された会話を、最長 2 年保存するとしています。
OpenAI も、法律で保存が求められる場合などは 30 日を超えて残すと書いています。
保存期間を細かく決めたい会社は、ChatGPT や Claude では Enterprise が必要です。社員 20〜50 人の会社なら、まずは Business や Team で始め、「間違って入れたら、その会話をすぐ消す」という運用で足りる場合が多いはずです。 これはカタカタとしての考えで、扱う情報によっては上位プランが必要になります。
管理機能:管理者が何を見られるかを、社員に伝えておく 3 つ目は、会社の中で誰が何を見られるかです。ここは 3 社の考え方の違いが出ます。
ChatGPT Business では、ワークスペースの管理者が、社員の会話を閲覧・書き出し・削除できます。Enterprise では、Compliance API という仕組みで、会話や GPTs の監査ログを取り出せます(出典:OpenAI「Enterprise privacy at OpenAI」 )。
Claude は、Team で SSO(会社の共通のログイン基盤で入れる仕組み)、料金と利用者の一元管理、コネクタ(外部の道具とつなぐ機能)の管理ができます。監査ログ、Compliance API、SCIM(社員アカウントの追加・削除を社内の名簿と連動させる仕組み)、保存期間の設定は Enterprise からです(出典:Claude「Plans & Pricing」 )。
Gemini は、Google Workspace の権限にそのまま従います。社員が開く権限のないファイルやメールを、Gemini が代わりに読むことはありません。人事や財務の書類を Gemini から遠ざけたい場合は、ダウンロードやコピーを禁じる設定や、クライアントサイド暗号化で制限できます(出典:Google「Google Workspace の生成 AI に関するプライバシー ハブ」 )。
管理機能は、情報を守る道具であると同時に、社員の会話を会社が見られる仕組みでもあります。どこまで見られるのかは、使い始める前に社員へ伝えてください。
知らされずに見られていたと分かれば、社員はその道具を避けるようになります。
契約前に確かめる 5 つの質問 比べるときは、各社の公式ページで次の 5 つを確かめます。答えが見つからないものは、販売窓口に問い合わせてください。
法人プランで、入力内容が学習に使われる例外は何か 。評価ボタンなどのフィードバックが例外になっていないか 会話はいつまで保存されるか 。削除した会話は何日でサーバーから消えるか 保存期間を会社で決められるのは、どのプランからか 管理者は社員の会話を見られるか 。書き出しや削除はできるか 外部の道具とつなぐ機能を、管理者が止められるか 。つないだ先のデータは学習に使われないか 5 つ目の外部の道具については、OpenAI は、連携したアプリから読み込んだデータも既定では学習に使わず、使えるアプリは管理者が決められると書いています(出典:OpenAI「Enterprise privacy at OpenAI」 )。メールやファイル置き場とつなぐ前に、ほかの 2 社も同じ点を確かめておきます。
カタカタの代表は、プログラマーとして 10 年働き、お客様のシステムのセキュリティ担当も務めてきました。その目で見ると、3 社の差は「学習に使うかどうか」より、こうした例外と管理の細部に出ています。何を入れてよいかの線引きは、別の記事「社員に生成 AI を使わせる前に決めること 」で手順をまとめています。
出典