対象の仕事

お問い合わせ用のメールアドレスに届く質問へ、メールで返信する仕事です。届くのは 1 日 40 件ほど。中身は、定期便の休止や解約、商品が届く日、返品の条件などです。

担当者は Gmail の共有アドレスを開き、届いた順に 1 通ずつ読みます。返品の条件や定期便の規定を社内の資料から探し、過去に似た返信がないか送信済みのメールを検索し、文面を一から書いて送っていました。

困っていたこと

1 件の返信に 15 分ほどかかっていました。文面を書く時間よりも、規定を社内の資料で探す時間のほうが長かったのです。規定は、共有フォルダの複数のファイルと、過去のメールに散らばっていました。

答え方が人によって違うのも悩みでした。同じ解約の質問に、ある担当は電話を案内し、別の担当はメールで手続きを受ける。前回と違う案内をされたと、お客様からお叱りを受けることもありました。

やったこと

STEP 1 答えの材料を 1 冊の規定集にまとめる

この STEP に AI は入りません。散らばっていた返品・定期便・配送の規定と、よくある質問への過去の返信を集め、1 冊の規定集にまとめ直しました。質問の種類ごとに章を分け、「この場合はこう案内する」「この場合は担当者が判断する」を書き分けています。古くなった規定は担当者と一緒に消しました。

STEP 2 Gmail のフィルタで、質問を種類ごとに分ける

Gmail のフィルタを作り、件名や本文に含まれる言葉で「定期便」「配送」「返品」「その他」のラベルが自動で付くようにしました。たとえば「解約」「休止」「スキップ」が含まれていれば「定期便」です。担当者はラベルごとにまとめて処理できるので、同じ種類の規定を続けて使えます。

STEP 3 Claude のプロジェクトに、規定集と書き方の決まりを入れる

Claude のプロジェクト(決まった資料と指示を読ませておける場所)を 1 つ作り、規定集を登録しました。プロジェクトの指示には、次の決まりを書いています。

  • 規定集に書いていないことは書かない
  • わからない点は、返信の本文に入れず、末尾に「確認が必要な点」として分けて書く
  • 宛名と署名は入れない。敬語の書き方は規定集の文例に合わせる

料金や日付を推測で埋めないようにするのが、いちばんの目的です。

STEP 4 担当者が本文を貼り、下書きを直して送る

担当者は、お問い合わせの本文から名前・住所・電話番号を消してプロジェクトに貼ります。Claude は返信の下書きと、確認が必要な点を返します。担当者は注文の状況を管理画面で確かめ、確認が必要な点を埋め、宛名を入れて Gmail から送ります。

仕組みの全体像

  1. お問い合わせのメールが共有アドレスに届く
  2. Gmail のフィルタが種類ごとにラベルを付ける
  3. 担当者が個人情報を消した本文を Claude のプロジェクトに渡す
  4. Claude が規定集を読み、返信の下書きと、確認が必要な点を返す
  5. 担当者が注文の状況を確かめ、宛名を入れて送る

人が残した仕事

送るかどうかを決めるのは、必ず担当者です。返金の可否や、規定にない例外の対応も担当者が判断します。苦情や、お客様の体調に関わる質問は、Claude の下書きを使わずに担当者が書きます。

情報の扱いで気をつけたこと

お問い合わせのメールには、お客様の名前や住所、注文番号が入っています。下書きに必要なのは質問の中身だけなので、渡す情報を絞りました。

  • 本文を貼る前に、名前・住所・電話番号を消す。宛名は送る直前に担当者が入れる
  • Claude は Team プランで契約した。Team プランのやりとりは、既定で AI の学習に使われない
  • 規定集を登録したプロジェクトは、問い合わせ対応の担当者と管理者だけが使える

変わったこと

1 件の返信にかかる時間は、15 分から 3 分になりました。

下書きの速さより、答えの材料を 1 冊にまとめたことが効きました。どの担当が書いても、同じ規定にもとづく返信になります。

担当者ごとの答えのばらつきがなくなり、前回と案内が違うというお叱りもほとんど来なくなりました。新しく入った担当者も、規定集と下書きを見ながら 1 週目から返信を書けています。

同じことを始めるなら

4 週間ほどで回り始めます。準備していただきたいのは、返品や配送などの規定が載った資料と、過去 3 か月分の問い合わせと返信です。Gmail 以外のメールでも進め方は同じです。

始めの週に、過去の問い合わせを種類ごとに数え、どの種類から下書きを任せるかを決めます。件数が多く、答えが規定で決まっている種類から始めるのが近道です。