対象の仕事

お客様から LINE で届くお問い合わせに返信する仕事です。中身は、設備が壊れた、鍵をなくした、といった急ぎのものから、契約の更新の手続きや、空き状況の確認まで、さまざまです。

もともとは、担当者がそれぞれ作った LINE で連絡を受けていました。担当者は自分のスマホで LINE を開き、1 件ずつ読んで返信し、急ぎのものは電話をかけたり業者に連絡したりしていました。誰がどの連絡を受けたかは、担当者本人にしかわかりません。

困っていたこと

担当者は 1 日中スマホの LINE を気にしていて、確認と返信に合わせて 1 日 3 時間ほど使っていました。外回りの最中に届いた連絡は、会社に戻ってから返すことになります。

困るのは、誰がどれに返したかが見えないことでした。2 人が同じお客様に返してしまったり、逆に誰も返していなかったり。返し忘れに気づくのは、お客様から電話で催促されたときです。

やったこと

STEP 1 問い合わせ専用の LINE 公式アカウントを作る

この STEP に AI は入りません。担当者ごとにばらばらだった窓口をやめ、会社として 1 つの LINE 公式アカウントを作りました。お客様には、更新の案内や書面で新しい窓口を知らせています。

LINE 公式アカウントには、届いたメッセージを外のプログラムに渡す仕組み(Messaging API の Webhook)があります。これを有効にし、届いたメッセージがすべて次の STEP の管理画面に送られるように設定しました。

STEP 2 届いたメッセージを 1 つの画面に集める

LINE に届いたメッセージを集めて並べる管理画面を、このために開発しました。メッセージはお客様ごとの会話として並び、写真もそのまま見られます。

1 件ごとに「未対応⁠/対応中⁠/完了」と担当者の名前が表示されるので、誰が何を抱えているかが一目でわかります。担当者が会話を開いて「対応する」を押すと、その会話は自分の名前つきで「対応中」になり、ほかの人の画面にもそう表示されます。この部分は AI ではなく、決まったとおりに動くプログラムです。

STEP 3 Claude が種類と急ぎ具合を判定し、返信を下書きする

メッセージが届くと、管理画面のプログラムがその本文を Claude に渡します。Claude は内容を読み、「設備の故障」「契約・更新」「その他」のどれかと、急ぎかどうかを判定して返します。急ぎと判定された連絡は、管理画面の一番上に赤い印つきで並びます。

あわせて、Claude は返信の下書きも作ります。手本にするのは、あらかじめ渡してある規約の要点と、よく使う返信の文面です。規約にないことは書かず、担当者が確かめるべき点を下書きの下に分けて書くよう指示しています。

STEP 4 担当者は確認して送るだけにする

担当者は管理画面で下書きを読み、必要なところを直して送信ボタンを押します。送った返信は LINE 公式アカウントからお客様に届き、記録は管理画面に残って、状況は「完了」に変わります。

仕組みの全体像

  1. お客様が LINE 公式アカウントに連絡する
  2. メッセージが管理画面に集まり、「未対応」として並ぶ
  3. Claude が種類と急ぎ具合を判定し、返信を下書きする
  4. 担当者が下書きを確認して送る
  5. 状況が「完了」になり、やりとりの記録が残る

人が残した仕事

修理業者の手配や、費用をお客様と会社のどちらが持つかの判断は、担当者がします。営業時間外の急ぎの連絡は、今までどおり当番の担当者に電話で知らせます。支払いの遅れやトラブルのように気持ちの絡む話は、下書きを使わず担当者が一から書きます。

情報の扱いで気をつけたこと

LINE にはお客様の名前や住所、写真が届きます。AI に読ませる範囲と、画面を見られる人を分けました。

  • Claude に渡すのはメッセージの本文だけ。お客様の氏名や電話番号、写真は管理画面の中にとどめる
  • Claude はプログラムから使う API の契約で使っている。API で送った内容は、既定で AI の学習に使われない
  • 管理画面に入れるのは社員だけで、退職した人のアカウントはその日のうちに止める

変わったこと

1 日の対応時間は、3 時間から 30 分になりました。

スマホを見張る仕事がなくなり、管理画面で未対応の件を減らしていく仕事に変わりました。

誰が対応中かが見えるので、二重に返すことも、返し忘れて催促の電話を受けることもなくなりました。外回り中の担当者の分も、会社にいる社員が画面を見て代わりに返せます。

同じことを始めるなら

6 週間ほどを見てください。管理画面の開発があるぶん、ほかの事例より少し長くかかります。準備していただきたいのは、過去 3 か月分ほどの LINE のやりとりと、よく使う返信の文面、急ぎとみなす連絡の基準です。

最初の 1 週間は、過去のやりとりを種類ごとに数え、どの連絡を急ぎとするかを決めます。窓口となる LINE 公式アカウントの準備も、この週に始めます。