対象の仕事

営業担当が PowerPoint で作る 2 種類の資料です。1 つは取引先ごとの提案資料で、もう 1 つは月 1 回の社内報告資料です。

どちらも、担当者が自分の PC や共有フォルダから似た過去の資料を探して複製し、表紙の社名を差し替え、表や図を別の資料からコピーして貼り、文字の大きさや色を手でそろえて仕上げていました。

困っていたこと

資料 1 本に 3 時間ほどかかっていました。多くは中身を考える時間ではなく、過去の資料を探し、表をコピーし、見た目をそろえる時間です。

担当者によって見た目もばらばらでした。同じ取引先に 2 人が別々の資料を出すと、会社の名前が違う色で載っている、ということも起きていました。Microsoft 365 Copilot は導入済みでしたが、作らせても手直しが多く、ほとんど使われていませんでした。

やったこと

STEP 1 PowerPoint のテンプレートを作り直す

この STEP に AI は入りません。提案資料用のテンプレートを作り、表紙、課題の整理、提案、料金、実績の順にスライドのレイアウトを用意しました。色と文字の大きさはテンプレートのテーマで決め、各レイアウトの文字を入れる場所もあらかじめ置いています。社内報告資料用にも同じように 1 つ作りました。

Copilot に頼むときは、このテンプレートから新しいファイルを開いてから頼みます。そうすると Copilot はテンプレートのレイアウトとテーマを使って下書きするので、見た目を直す作業がほぼなくなります。

STEP 2 手本の資料を 1 つのフォルダに集める

Copilot が参考にできるのは、頼む人が開ける場所にある資料だけです。そこで、評判のよかった提案資料 30 本を選び、営業部の SharePoint のフォルダに集めました。古い料金が載った資料は外し、ファイル名を「取引先の課題_提案の中身」の形にそろえています。Copilot に「/」でファイルを指定するとき、名前から中身がわかるようにするためです。

STEP 3 頼み方を 1 枚の文書にまとめる

頼み方の文面を、提案資料と社内報告でそれぞれ 5 種類ずつ用意し、1 枚の文書にまとめて共有しました。たとえば提案資料なら「添付の商談メモをもとに、取引先の課題と提案を 8 ページで。構成はこのテンプレートの順。参考資料は /(手本のファイル名)」という形です。

営業担当は、この文面をコピーし、商談メモを貼り、自分の言葉を少し足して Copilot に渡します。Copilot はテンプレートの型に沿って、課題の整理と提案のページを埋めた下書きを作ります。

STEP 4 担当者が数字と中身を直し、上長が確認する

下書きができたら、営業担当が料金と実績の数字を最新の表から入れ直し、提案の中身と言い回しを直します。社外に出す資料は、出す前に上長が 1 度確認します。

仕組みの全体像

  1. 営業担当がテンプレートから新しいファイルを開き、商談メモを用意する
  2. 頼み方の文面に商談メモと手本の資料を添えて、Copilot に頼む
  3. Copilot がテンプレートの型と手本の資料をもとに、下書きを作る
  4. 営業担当が数字と提案の中身を確かめ、言い回しを直す
  5. 上長が確認して、取引先に出す

人が残した仕事

料金と実績の数字は、必ず営業担当が最新の表から入れ直します。Copilot が過去の資料から古い数字を拾うことがあるからです。何を提案するか、取引先の事情をどう汲むかも人が決めます。Copilot が手伝うのは、その考えを資料の形にするところまでです。

情報の扱いで気をつけたこと

資料には、取引先の担当者の名前や、個人の経歴が載ることがあります。そのため、Copilot が読める場所と、資料に入れてよい情報を分けました。

  • 個人の氏名や経歴が入った資料は、手本用のフォルダに入れない
  • Copilot が読めるのは、頼んだ人がもともと閲覧できるファイルだけ。手本用のフォルダの権限は営業部に絞った
  • 社外に出す資料は、出す前に上長が 1 度確認する決まりを残した

変わったこと

資料 1 本の作成は、3 時間から 40 分になりました。

先に型と手本を整えたことで、Copilot の下書きが「直せば使える」ものに変わりました。

どの担当者の資料も同じ型になり、同じ取引先に出す資料の見た目がそろいました。新しく入った人も、先輩の資料を探し回らずに 1 本目を作れるようになりました。

同じことを始めるなら

4 週間ほどが目安です。Microsoft 365 Copilot の契約があることが前提で、ほかに、評判のよかった資料を 20⁠〜⁠30 本選んでおいていただきます。

最初の 1 週間は、資料の種類ごとにページの順番を決め、テンプレートを作るところまで進めます。Copilot に触るのは型ができてからです。