AI の使い道が「メールや資料のたたき台づくり」で止まっている会社は多いです。代表の戸田は、経営者と話すなかで、そう感じてきました。
本当に時間とお金が浮くのは、営業・経理・問い合わせのように、毎月決まって発生する業務そのものを AI で回すようにしたときです。
この記事は YouTube 動画『AI業務効率化の実例5つ紹介。Claude Code・Codex・Geminiで経費削減・売上アップ』の内容をまとめたものです。動画で紹介した 4 つの他社事例と、代表がデイトラで進めた経理の事例を、それぞれ「自社で始めるならどこからか」まで書きます。
他社事例の数字は、記事にする時点で各社の公開情報を確かめ、確かめられたものだけを載せています。
1. 問い合わせメールの返信下書きを AI に作らせる(Anthropic の営業チーム)
Claude を開発している Anthropic では、営業担当の一人が、顧客からのメールへの返信下書きを AI に作らせる仕組みを自作しました。公式ブログによると、この仕組みで本人は 1 日 2〜3 時間を節約できたとされています(出典:Claude 公式ブログ「How one Anthropic seller rebuilt his team's workflows with Claude Code」2026 年 6 月 5 日)。
仕組みはシンプルです。過去のメール、返信の例、よくある質問、製品の情報を AI に参照させ、問い合わせが来たら返信の下書きまで作らせる。
営業担当は、返信を一から考える代わりに、下書きを確認して直す側に回ります。
代表は動画で、仮の数字を置いて効果を計算しています。
前提と計算 | 金額・時間 |
|---|
1 日 2 時間 × 月 20 日 | 月 40 時間 |
時給を低めの 2,000 円で見積もる(1 人あたり) | 月 8 万円、年間 96 万円 |
営業が 5 人いる場合 | 年間 480 万円 |
人をもう 1 人雇えるくらいの金額になります。
自社で試すなら、使っている AI がメール(Gmail や Microsoft 365)と連携できるかをまず確かめます。そのうえで「過去の問い合わせと返信をもとに、新しい問い合わせへの返信を下書きに保存して」と頼むところから始められます。
決まった時刻に実行させれば、出社したときには下書きがたまっている、という状態も作れます。
2. 広告の画像と文言を AI で大量に作って試す(Omneky)
広告運用でいちばん時間を食うのは、画像や動画、広告文といった「クリエイティブ」づくりです。
文言を考え、画像を作り、サイズ違いをそろえ、A/B テスト(2 つの案を出し分けて成果を比べる方法)をして、また作り直す。この繰り返しに終わりがありません。
AI 広告プラットフォームの Omneky は、この作業の多くを AI で回しています。成果の出ている訴求を分析し、想定する顧客像に合わせた画像を生成 AI で作り、文言を含めた多数の案を出し分けて試す、という流れです。
米国のイベント会社 2X Monster Trucks の事例では、画像広告の ROAS(広告費 1 円あたり何円の売上になったかを示す指標)が 7.51 になったと公開されています(出典:Omneky「How 2X Monster Trucks Achieved 7.51 ROAS…」2025 年 4 月 8 日)。広告費 100 円に対して 751 円の売上、という意味です。
成果が出る理由を、代表は「AI が案を大量に作り、人間は勝ちパターンを選ぶだけになるから」と説明しています。
広告は多くのパターンを試すほど当たりを見つけやすいのに、これまでは作る手間とお金がネックでした。そこが AI で軽くなり、試して直すサイクルを速く回せるようになったわけです。
代表は、この考え方を新しいサービスの検証にも使っています。サービスを作る前に告知や広告を出して反応を見る「フェイクドアテスト」と呼ばれるやり方で、反応が悪ければやめ、良ければ本格的に作ります。
AI で広告の案を素早く作れると、この検証も回しやすくなります。
3. 社員 5 人の会社が、問い合わせ対応を AI チャットボットに任せた(中西昆布)
福井県で昆布を販売する有限会社中西昆布は、従業員 5 人の会社です。
電話が鳴るたびに作業を止めて対応し、専門的な質問は社長しか答えられないため折り返しになる。そんな状態が続いていました。
同社はウェブサイトに、生成 AI を組み込んだチャットボット(自動で会話して質問に答える仕組み)を導入しました。サイトの情報を AI に読み込ませ、昆布の味や出汁の取り方、注文の状況といった、よくある質問に即答させています。
導入から約 4 か月で 3,300 件以上の問い合わせに自動で対応し、注文や新規のネット注文も増えたと公表されています(出典:PR TIMES「【導入事例】AIチャットボット搭載のMAツール『おりこうAIコンシェルジュ』、有限会社中西昆布(食料品製造業)への導入で業務効率化・売上げアップを実現した事例を公開」2025 年 8 月 21 日)。
問い合わせに追われていた 5 人が、製造などの本来の仕事に時間を使えるようになった。小さい会社ほど、この効果は大きく出ます。
代表は動画で、同じような仕組みは Dify(ディファイ)というツールでも作れると紹介しています。自社の情報やよくある質問を登録しておくと、それをもとに答えるチャットボットを作れ、ウェブサイトに埋め込むこともできます。
サイトからの問い合わせが多い会社なら、まず検討したい使い方です。
4. 社内の情報を 1 か所に集めて、探す時間を減らす(大阪ガス)
会社が大きくなるほど、情報は Excel、Word、チャット、メール、個人のパソコンに散らばります。「あの資料どこだっけ」「これ誰に聞けばいいんだっけ」という時間は、地味ですが積み重なると大きい。
大阪ガスは、議事録、社内ルール、プロジェクトの進み具合といった文書をドキュメントツールの Notion に集約しました。
毎月 8 万ページが作られたり編集されたりしていて、ページを共有する手間が減った分だけで、月 2,000 時間以上の削減になると公開されています(出典:Notion「シームレスな情報共有で毎月2000時間の削減。大阪ガスの未来を担う最新のAI技術」)。以前は、相手の権限に合わせて文書を作り直し、メールに添付していたそうです。
あわせて、Notion に組み込まれた AI 機能(Notion AI)で、ページを探したり文書を要約したりする使い方も試しています。代表の試算では、月 2,000 時間を時給 2,000 円で換算すると、月 400 万円、年間 4,800 万円分の時間にあたります。
いきなり社内の情報を全部移すのは大変です。
代表のおすすめは、Google の NotebookLM(資料を読み込ませて、その中身について質問できるツール)に、社内資料の一部をアップロードして試してみることです。
5. 経理の手作業を、入力から確認に変える(デイトラ)
最後は、代表がオンラインスクール「デイトラ」で取り組んだ例です。代表によると、この取り組みで経理の手作業を 9 割減らせました。
取引先には 100 人を超えるフリーランスの方がいて、依頼内容もさまざまです。月末の締めは経理の負担が重く、振り込みは信頼できる人にしか任せられないため、役職の高い人の時間を取っていました。
効率化したのは、請求書の回収・仕訳・振り込みの 3 つの工程です。
経理の仕事を、入力から確認に変えた流れ- 請求書の回収:Airtable(表計算ソフトのように使えるデータベース)で、請求書を 1 か所に集める仕組みを作った。ここは AI 導入前からの仕組み
- 仕訳:請求書や領収書を AI で読み取り、過去のパターンから勘定科目を判定して、会計ソフトの freee に入力させる。読み取った後は、あらかじめ用意したプログラムで税額や項目の計算が合っているかをチェックする
- 振り込み:読み取ったデータから、銀行に取り込める振り込み用のデータをプログラムで作り、銀行にアップロードする
どの工程にも、最後は人のチェックを入れています。代表の言葉を借りれば「人の仕事を、入力から確認に変えた」取り組みです。
AI はどうしてもミスをするので、プログラムによるチェックを挟むと、さらに安全になります。
全部をいきなり自動化するのは大変です。
まずは領収書をアップロードして、Claude や Gemini で文字を読み取らせ、Excel の表にしてもらうところから始めるとよい、と代表は勧めています。
AI で効率化しやすい業務の 4 つの条件
5 つの事例を並べると、AI で効率化しやすい業務には共通点があります。代表が挙げたのは次の 4 つです。
- 繰り返し発生する業務である
- 判断のルールがある
- 過去のデータがある
- 最終的に確認する人がいる
自社の業務をこの 4 つに照らしてみると、どこから手をつけるかの見当がつきます。
AI は人の仕事を丸ごと置き換えるものではありませんし、判断の機会を奪うものでもありません。ただ、仕事の効率は大きく上がります。
人を雇わず、プログラミングを学ばなくても、AI を使いこなすだけで経費の削減と売上の伸びにつながる。経営者にとっては大きなチャンスだ、というのが代表の考えです。
社内の業務を AI で回すことは、社内の情報を AI に渡すことでもあります。社内の情報を読み込ませた AI を通じて、人事評価の書類が社員の目に触れてしまう、といったことは実際に起こりえます。渡す情報の範囲と、誰が何を見られるかを先に決めてください。
もう一つの注意点は、仕組みの作り込みです。経理の例のように AI のミスに気づける仕組みを入れ、使う人にとって扱いやすい形にしないと、かえって業務が複雑になり、効率が上がらないこともあります。