社員 33 人の専門商社が、営業担当の「調べる」「書く」仕事に生成 AI を使い、広告からの問い合わせを、以前の月 5 件ほどから多い月で 45 件まで増やしました。

東京都新宿区の株式会社オプトサイエンスの事例で、中小企業庁の 2026 年版中小企業白書に載っています(出典:中小企業庁「2026年版 中小企業白書 第2部第2章第1節 事例2⁠-⁠2⁠-⁠3 株式会社オプトサイエンス」2026 年 4 月 24 日公表)。

この事例が中小企業に参考になるのは、特別なシステムを作っていないからです。社長が自分で使い始め、社員が使えるように勉強会を開き、営業担当がふだんの仕事で少しずつ使い道を広げた。それだけで成果が出ています。

会社の課題:専門的すぎて、説明書のない商品が多い

オプトサイエンスは、レーザーに関連した光学機器を輸入して販売する商社です。お客様は大学や研究所、メーカーの開発部門。品ぞろえの多さと、技術に詳しい営業担当、手厚いアフターサポートが強みです(出典:同白書)。

その強みが、そのまま営業担当の負担になっていました。扱う製品は最先端で専門性が高く、個別の技術解説書やマニュアルがないことも多い。

そのため営業担当は、関連する海外の論文や英語のマニュアルを探して読み込み、自分で技術解説の文書を作っていました(出典:同白書)。

広告にも悩みがありました。業界の専門誌に年 12 回広告を出していたものの、作るのは広告に慣れていない営業担当です。

たくさんの商品から毎号の特集に合うものを選び、キャッチコピーを考えるのは難しく、広告枠を生かしきれていなかったといいます(出典:同白書)。

何をしたか:社長が使い始め、社員が使える場をつくった

社長が自分で試し、勉強会を開いた

きっかけは社長です。宍野吉虎社長は 2023 年 1 月に対話型の生成 AI を初めて使って衝撃を受け、同じ年のうちに会社として導入しました。

社長自らいろいろな業務で試し、プロンプト(AI への指示や質問)の書き方の勉強会を開くなど、社員が AI に触れる時間と環境を用意しています(出典:同白書)。

白書には、社長の「人間に説明するように具体的に細かく指示をすることが重要」という言葉が載っています。対話を続けるうちに、社員も適切な頼み方を感覚でつかめるようになったそうです。

営業担当の「調べる」を助けた

使い道の中心は、営業担当の専門知識を補うことでした。

  • 世界中の論文を集めて要約させる
  • 英語のマニュアルを翻訳させ、要点を抜き出させる

特に、経験の浅い若手の技術知識を補うのに役立ったと書かれています(出典:同白書)。

広告は「AI が案、人が仕上げ」にした

広告づくりでは、役割をはっきり分けました(出典:同白書)。

担当

やること

AI

どの商品を載せるか、キャッチコピー、その商品を選んだ理由、訴えるポイントまでを出す

営業担当

AI の案をもとに推敲して仕上げる

AI が出した情報が正しいかどうかは、必ず人が確かめるルールにしています。

白紙から考えるのが苦手な人ほど、「案を出させて、選んで直す」形にすると AI の効果が出ます。ただし、事実の確認だけは必ず人の仕事として残します。

結果:問い合わせが増え、「一人で悩む時間」が減った

白書によると、営業担当はマニュアルのない製品でも詳しく説明できるようになり、会社の強みである技術に詳しい営業をさらに伸ばせています。

営業担当からは「一人で悩む時間が減った」という声が出ているそうです(出典:同白書)。

広告の効果も変わりました。営業担当の負担を減らしながら、反応は平均で 2 倍以上に増えました。

以前は月平均 5 件ほどだった広告経由の問い合わせが、多い月には 45 件に達しています(出典:同白書)。

広告づくりを、AI が案を出し営業担当が仕上げる形に変えた。広告経由の問い合わせは月 5 件ほどから、多い月で 45 件まで増えたことを示す図。
AI が案、人が仕上げる広告で問い合わせが増えた

使い道はその後も広がっています。

  • 営業資料のたたき台づくり
  • 翻訳
  • 契約書の確認
  • 請求書のファイル変換

アフターサービスでは、機器の不具合の原因を探すのに、生成 AI でプログラムのコードを調べさせ、トラブル対応の負担を大きく減らしたとあります(出典:同白書)。

小さな会社ほど、この進め方が合っている

同じ白書は、事例のすぐ後のコラムで、中小企業が AI を取り入れやすい理由を挙げています。経営者が上から決めやすく、組織の階層が少ないぶん決めるのが速い。

そのうえで、企画・事務・広報・会計のように中小企業で人が足りなくなりがちな仕事を AI で補い、AI が出した答えを経営者が判断すれば、意思決定はなめらかに進む、という見立てです(出典:中小企業庁「2026年版 中小企業白書 第2部第2章第1節 コラム2⁠-⁠2⁠-⁠1 AXによる中小企業の飛躍的成長のチャンス」2026 年 4 月 24 日公表)。

オプトサイエンスの動き方は、この見立てどおりです。社長が使って確信し、その年のうちに会社として導入した。広告づくりという「専任者がいない仕事」を、AI の案と営業担当の手直しで回した。

決めてから動くまでの距離が短いことが、そのまま強みになっています。

自社の営業で試すなら、こう始める

オプトサイエンスの進め方は、そのまま真似できる順番になっています。

  1. 経営者がまず自分で使う。1 週間、自分の仕事で毎日使ってみて、何に向いて何に向かないかを体で知る
  2. 社内で 1 時間の勉強会を開く。頼み方の例を 3⁠〜⁠4 個見せ、その場で全員に試してもらう
  3. 営業担当が一番時間を取られている「調べる」「書く」作業を 1 つ選ぶ。英語資料の要約、商品説明文、提案書の下書きなど
  4. 「AI が案を出し、人が直す」形で使う。数字、仕様、価格など事実にあたる部分は、必ず元の資料で確かめる
  5. 使えた例を社内で共有し、別の作業に広げる
試すときは、お客様から預かった資料や、取引先と秘密保持契約を結んでいる情報を AI に入れてよいかを、先に決めておいてください。会社として契約したサービスで、入力した内容が学習に使われない設定になっているかも確かめます。

英語の論文やマニュアルの要約を頼むなら、次のような指示文から始められます。

添付の英語マニュアルを読み、日本語で次の形にまとめてください。

1. この製品が何をするものか(3 行以内)
2. 主な仕様(表にする。マニュアルに書かれている数値だけを使う)
3. お客様からよく聞かれそうな点と、その答え(マニュアルに根拠がある範囲で)
4. マニュアルからは読み取れず、メーカーに確認すべき点

マニュアルに書かれていないことは推測で書かないでください。

最後の 1 行と、4 番目の「確認すべき点」が大切です。オプトサイエンスが徹底しているファクトチェックを、指示文の段階から組み込んでおく形になります。

広告の案を出させるなら、こう頼みます。

次の号の業界誌の特集テーマは「(テーマ)」です。
添付の商品一覧から、この特集に合う商品を 3 つ選び、それぞれについて次を書いてください。

- 選んだ理由(特集テーマとのつながり)
- 読者(大学や企業の研究者)に響きそうな訴求ポイント
- キャッチコピー案を 3 つ

商品一覧に書かれていない性能や数値は使わないでください。

ここでも、商品一覧にない数値を使わせないことが要です。選ぶ・書くは AI に任せ、載せる数字が正しいかは営業担当が確かめます。

出典

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